安藤仁子の父・安藤重信はどんな人物なの？

このページは、NHKの朝の連続テレビ小説「まんぷく」の中のヒロイン今井福子（安藤サクラ）の実在モデル・安藤仁子さんの父・安藤重信さんがどんな人生を歩んだのかについて詳しく解説していきます。

安藤重信さんの事業の影響で、ドラマでは鈴（松坂慶子）が自分と同じ思いを娘にさせたくないという心配性の性格になります。そのため、具体的にどんな人物だったのか。どんな人生を歩んできたのかを一緒にみていきましょう。

まんぷくの中での今井福子の父

NHKの朝ドラ「まんぷく」ヒロイン・今井福子は、母親の鈴と2人の姉の4人家族という設定でドラマがスタートします。今井福子の父親は、ドラマスタート時点から亡くなっていることになっていて、安藤重信さんにあたる人物はドラマには登場しません。

ドラマの序盤に、今井家の一番上の姉、咲の嫁入りを父の仏壇の前で報告するというシーンが何度かあるだけです。父親を早くに亡くした今井家は経済的に厳しく、内田有紀さんが演じる長女の咲が貴金属店で働いて一家を支えています。

「まんぷく」の今井福子の父には、安藤重信さんという実在のモデルがいます。朝ドラの中では今井福子が幼少の頃になくなったことになっていますが、安藤重信さんは安藤仁子さんが成人した後にも健在でした。

安藤重信さんは福島県二本松市にある二本松神社の神職の家の次男として生まれました。二本松神社は江戸時代の二本松藩の総鎮守で、神職を務めていた安藤家は地域の名家でした。

御本宮は紀州熊野本宮で、「御両社」とも呼ばれていました。江戸時代には藩主の丹羽家から車輌や扶持米が与えられるほどの厚遇を得ていました。地域の名家として生まれ育った重信さんでしたが、次男だったために二本松神社の宮司は継げず、養子に出されてしまいます。

安藤重信さんは、早稲田大学を卒業したエリートで、土木技師としてダムの設計なども手がけていたようです。岡山県のダネイホン高梁ダムなどの設計に関わっていたという記録が残されています。

早稲田大学を卒業した安藤重信さんは、宗像家の婿養子になります。その後宗像家で事業を任されますがうまくいかず、宗像家から離縁をされてしまいました。離縁の原因の一つに、重信さんが浪費家だったということもあったようです。

宗像家から離縁をされた安藤重信さんは、再起をかけて大阪に移り住みます。ここで、朝ドラの今井鈴のモデル・安藤須磨さんと出会って結婚し、安藤晃江・安藤澪子・安藤仁子の3人の子宝に恵まれます。

その後の安藤重信さんの人生は、成功と失敗の波瀾万丈の人生でした。安藤重信さんは大阪で人力車の会社を起こして成功します。３人の子どもが幼少だった頃はとても裕福で、何不自由のない生活を過ごしていました。

人力車の会社の他に水力発電事業にも商売を広げるなど、大阪では有名な資産家でした。ところが、安藤仁子さんが７歳くらいの頃から会社の経営が傾き始めてしまいます。

人力車の会社の経営が厳しくなると大阪市淀川区に住居を移しますが、家賃さえ払うことができないほどの貧しい生活を過ごします。この頃、淀川でシジミを捕って何とか生活できていたという記録が残されています。

安藤重信さんは、政治家をめざしていた時期もあります。男爵の爵位を手に入れようと、貴族院議員の選挙に出馬したのです。貴族院議員に当選すると、公爵や侯爵になれたからです。

安藤重信さんは多額のお金を選挙資金につぎ込んで努力をしますが、結局報われることもなく、とうとう人力車の会社は倒産してしまいました。安藤家は、一時は高級住宅地で有名な玉造にある鴻池財閥の屋敷の隣に住むほどの勢いがありました。

しかし、重信さんが事業に失敗してからは大きく変化します。大阪市淀川区の住居の家賃も払えず大阪市阿倍野区にある小さな長屋暮らしに落ち、金銭的にかなり苦労をしたのです。

「まんぷく」のヒロイン今井福子の実在のモデル・安藤仁子さんが高等女学校に通っていた頃は学費が払えず、1年間休学をしています。仁子さんはその後電話局に勤務をして1年後には復学を果たしています。

野心家で浮き沈みの激しかった安藤重信さんの生き方は、家族には大変な苦労をかけてしまったのです。安藤仁子さんの父・安藤重信さんはかなりの野心家で、家柄と能力にも恵まれて一時は大成功を収めますが、長屋の家賃が払えないほどのどん底生活も味わいます。

朝ドラの中ではドラマのスタート（1938年）から亡くなっている設定になっていますが、実在のモデル・安藤重信さんが亡くなったのは1942年（昭和17年）。御年72歳でした。